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転地療養

転地療養を行うことがほぼ決定した。



 それに先立ち、転地療養先の病院へ行き、診察を受けてきた。
その病院の初診受付は午前中のみということで、前日から一泊して受診をしてきたのであった。

 行く前には「旅みたいな感覚で少しでも楽しめたら良いだろうが、そんな気分にはなれそうもない」と思っていたのだが、行ってみれば非現実という感覚で、幾分気分は良くなったように思う。ただし、緊張もしていたようで、宿ではなかなか寝付けず、念のため持っていった追加の眠剤が役に立った。「朝起きられなかったらどうしよう」とも思ったのだが、やはり緊張していたのだろう。無事に起きられた。
 しかし、移動は疲れる。片道だいたい3時間である。行きは半分以上立っていた。乗り物は好きであるが、3時間立ちずくめはさすがに厳しい。途中、席が空いたので座れたが、気分としては結構な疲労度である。到着しても基本的にやることはない。観光ではないので当たり前かもしれぬ。
 せっかく遠くまできた(まあ、日帰り圏内ではあるが)のだから、ご当地の物でも食べようと思い、スマートフォンで宿近くの飲食店を検索してみたが、距離が結構あるので駅前の食堂で済ませることにした。とはいえ、ボリュームはあったしなかなか美味であった。といっても、美食家ではないので美味かどうかの判断は曖昧であるが。暑かったしせっかくの非日常感覚なので一杯飲みたかったものの、翌日には外来の受診を控えているため諦めた。今考えると飲んでも良かったのかもしれぬ。勿論、一杯程度であるが。

 ワタクシは飲むと決めたらとことんまで飲む性分である。しかし飲む機会は年に数回だ。以前旅行をしたときには鱈腹食べて飲んだ。食べ物も美味しく酒も美味かった。二日酔いになるかと思いきや、意外に残っていなかったのには自分でも驚いたが、かなりの量を飲んだ。それも二日連続である。食い道楽呑み道楽みたいな旅であった。いや、楽しかったので良いのだが。

 話を戻す。翌朝起きて朝食を取る段になったら思いの外、食が進む。我ながら変であった。前日の夕食だって結構な量であったのに。やはり日常と違うというのはそれなりの変化をきたすのだろう。

 病院へ向かうと予定していた時刻より少々早く着いた。早く着く分には問題ないだろう。病院の外観は非常に綺麗であった。まだ新しいのだろうか。敷地も広く驚いてしまった。ワタクシが以前入院をしたことのある精神科病院は、正直言って綺麗と言えるほどの病院ではなかった。鉄格子さえなければ、普通にどこにでもありそうな病院といった感じである。しかし今度の病院は本当に綺麗であった。その印象は院内に入っても同じであった。明るくて開放感のある入り口。待合室も同様である。一般に想像する病院とはだいぶ趣が異なっていた。しかも精神科病院である。このギャップには驚くばかりであった。

 受付で問診票を記入する。主治医の外来は混んでいたそうである。早めについて良かったのだろう。まずは問診を受け、次に入院するであろう病棟の見学である。驚いたことに、外来診察室から目と鼻の先にその病棟はあった。病棟内も非常に綺麗であった。なんであろう、綺麗だけでは言い尽くせない何かがある。ワタクシは全てを見学させてもらったわけではないが、見学させてもらった病棟内を見ただけでかなり設備が充実していることを感じた。病室も診察室同様明るくて開放感があった。
 精神科病院の入院病棟というと、先入観なのかもしれぬが少し狭隘感を自然とイメージするのだが、その病院は全く違っていた。ただ普通の病院とは異なると思ったのは、病棟内が非常に静かなこと、出入り口は施錠されていることだろうか。鍵がかかるところからすると閉鎖病棟なのだろう。まあ、精神科病院ではよくある光景である。しかし静けさには驚いた。一瞬ではあるが隔離という印象を受けた。もっとも、治療のため日常事をシャットアウトする必要があるからだ。とはいえ、あまりの静けさに声を出すのも憚られるような気もした。他の患者さんと会話などないかもしれぬと思ったのである。

 ワタクシは今までに総合病院の精神科病棟と精神科病院の病棟へ入院した経験がある。いずれの入院でも患者さんどうしで話し合うことは多かった。患者どうしのコミュニケーションも入院生活の中では重要だと思っている。ところが今回見学させてもらった病棟は会話している人を一人も見なかったので驚いた。偶然その様な状況を見学しただけかもしれぬが、人と全く会話をしないのも結構辛いかもしれぬと感じたのは事実である。

 病棟見学のあとは再度診察を受け、入院の意思を確認された。拒む理由はない。
そもそもなぜ片道3時間もかかる病院を選んだのかといえば、主治医の勧めもあるのだが薬物療法ばかりではなく、その他色々な角度から治療を行っている病院と聞き、下見を兼ねて診察を受けに行ったのである。そういった治療を受けられる病院は、現在では極わずかとなってしまったのだそうだ。薬物治療の発展に伴って、それ以外の治療方法というのは積極的には行われなくなってしまった。また、その様な治療を行える医師も少なくなってしまった。あまり詳しく書くと特定できるような気がしてきたのでもう止めておく。
 入院予約をしてきた。あとは病棟の空き具合による。なんとなく直ぐには空きそうにない感じである。なぜならばほぼ満床であったからである。ただ、ワーカーさんの話によると短期入院の方が多いらしいので、しばらく待っていれば空くのだろう。入院するときにどのように病院へ行くのかという問題が残ってはいるのだが・・・。

 会計をして帰る算段でいたのだが、想定外なことが起きた。病院の問診票には必ずといっていいほど飲酒と喫煙についての記入欄がある。ワタクシは1日1箱程度ではあるが愛煙家である。ところが、こちらの病院は全面禁煙で、敷地内での喫煙はできないそうである。敷地外であれば喫煙は可能なのだろうが、病棟内に煙草を持ち込んではならないそうなのである。外出許可をもらって敷地外で煙草を吸ったとしても、残った煙草を持ち帰ることができないのである。だからといって一遍に20本吸うことも無理である。これは大きな誤算である。ちなみにワタクシは煙草を止める気が皆無である。しかし、入院するためには限られた期間とは言え禁煙しなければならないわけで、看護師さんに呼び止められて禁煙治療を薦められた。
 成り行きといってはいけないのだろうが、急遽禁煙治療を受ける事になってしまった。禁煙外来の先生はとても親切な方であった。退院後また煙草を吸うであろう事を予想しているだけに、なんだか申し訳なくなってしまった。なぜならば、また煙草を吸えば成功率を下げることになるからである。止めれば良いのかもしれぬが、どうも納得がいかぬというか腑に落ちぬ。だいたい、当の本人は止めたいと思っていないのである。止めなければならぬ必要も今のところはない(と思っている)。しかし、禁煙補助薬を処方されて病院をあとにしたのであった。

 予想外に時間がかかったこと、病院からの交通手段がうまくいかなかったことなどからかなり遅い昼食となった。そこまではまだ良かったのだが、また3時間ほどかかる家路に向けて煙草を吸っておかねばならない(脅迫的だが)のと、トイレを済ませておく必要があった。気付いたら乗るべき列車は行ってしまった。しかも発車して間もなくである。次の候補は1時間後・・・。いうまでもなく帰宅時間はかなり遅く・・・。

 帰宅の途、少しずつ家へ近付いて行くわけであるが、それまでの非現実感が薄れ現実味がどんどん増すに従い、気が重くなっていった。それまではまるで忘れたかのように考えなかったことを否応なしに思い出し考えさせられるからである。先生は非日常ではなく脱日常と言っておられたが、また現実の世界へ引き戻されていくのは辛さ抜きでは考えられなかった。そのままどこかへ消えてしまうことができれば・・・。逆に言えば、それだけワタクシの日常は疎ましい生活なんだろう。充実などしていない。ちょっと言葉のニュアンスは異なるが、近頃流行のリア充とはかけ離れた生活とその環境。いや、バーチャルであっても充実などしていないのだ。どれだけ面白味のない、張り合いのない生活なのだろうか。我ながら可哀想なほどである。

 転地療養後はこの印象が変わるのだろうか。多少なりとも充実したり希望が持てるのだろうか。今のワタクシにはそう思えない。しかし、そう思えるように努力せねばならぬのだろう。治療を通して。

 しかし、随分長文となってしまった。また、遅い時間でもある。なぜこんな時間までこんなに長い文章を書くか。うつであればこんなに書くことは不可能なことなのかもしれぬ。しかしワタクシには書かねばならぬとの思いが働くのである。やはりどこか脅迫的なのだろう。
by donkeys-ear | 2013-08-11 01:26 | 心のヤミ